『世をへだてて』


庄野潤三著『世をへだてて』 (講談社文芸文庫)

*

 一つの動作に心配したり、安堵したり。立ち上がることも、踏みしめて歩くことも、家族がいることも、誰かを思い気にかけることも、かけがえのないものとして改めて身にしみる思いになった。予期せぬ病に倒れ、そこからのリハビリ、回復に至る過程が家族からの聞き書きも混ざり描かれている。福原麟太郎の作品を読み返し、身をもって知る実感やもう今はこの世にいないと知りながら励まされ励ましたくなる思いは、この本を手に取り読む読者の気持ちとも重なるようでじんとくる。運命の分かれ目や出会った人々、寄り添う家族のかたち一つ一つが愛しい。

*         *


世をへだてて (講談社文芸文庫)


関連記事